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金魚姫徒然日記

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探し物


今夜、探し物ついでに棚の上に置いてある手紙の中から何枚かを選んで読み返してみた。いつも傍に置いてあるのだけど滅多に読み返したりはしないのでとても懐かしく胸の奥がきゅんきゅんした。

もう連絡の途絶えてしまった女友達に昔もらったいくつかの手紙。
文面は手紙といえるようなものとはほど遠くそのほとんどが殴り書きのようなものだった。でもそれだけに彼女の心の叫びがあ行やらか行やらとにかくいたるところから聞こえてきて、別に特別なことは書かれてはいないのにわたしはいつも妙に緊張した気持ちでその言葉ひとつひとつを噛み締めるように読んだ。彼女はいつもそんな書き方をしていた。便箋を使ったことは一度もなく、いつもルーズリーフや何かの紙の切れ端に書いては少し照れくさそうに渡してきた。まるで高校生みたいに。でもまさにわたしたちはあの頃二度目の高校生活を送っているようだった。実際の高校時代の思い出はほとんど何もなかっただけにそれが嬉しくてたまらなかったのを今でもよく憶えている。こんなことがあった。夜遅くいつもの仲間たちと彼女の部屋で遊んでいた時、ベランダに不審者を発見しドキドキしながら警察に電話をした。警官も不審者らしき男をすぐに発見したらしくこれで安心とほっと胸を撫で下ろした矢先、今度はさっきの警官がわたしたちの部屋にやってきた。当然無事捕まえたという報告をしに来たのだと思った。が、実際は違っていた。わたしたちが不審者だと思っていた男はなんとマンションの管理人だった。毎晩毎晩あまりにわたしたちがうるさいので、もう我慢ならぬと注意をしようとしていたそうだ。おかげでわたしたちは逆に警官から厳重注意を受ける羽目になったのだが、その晩は自分たちのあまりのマヌケさに笑いが止まらなかった。反省してる者など誰一人いなかった。その後も当たり前のようにわたしたちの密会は続いた。あの頃はそんな生活が生きていくための支えだったように思う。
家庭の事情を抱えていた彼女とは、彼女が実家を行き来することが増えたのをきっかけに徐々に疎遠になっていった。でも疎遠になったのは彼女とだけでなく、一緒につるんでいた仲間にも彼氏が出来たり就職が決まったりしたため次第にみんなと会う時間は減っていった。わたしはせっかくいい夢を見ていたのに無理矢理見知らぬ誰かに起こされたみたいな気がして不愉快極まりなかったが、その怒りを誰にぶつけていいのかも分からずただ毎日ポカーンとするばかりだった。その時片思いをしていた男には、それまでは結構いい顔をされていたのにいざ告白をした途端「今は彼女と上手くいってるから無理」と言われあっさり切られた。うまくいかないときは何をやってもうまくいかないんだと思ったら可笑しくて泣きながら笑った。
この手紙を読み返すまではまさかこんなことまで思い出すとは思わなかったが、一瞬あの楽しかった頃に戻れた気がして嬉しかった。手紙をくれた彼女は今どこで何をしているのか分からないけど、異常なほどの酒好きだったのでまずは生きてるかどうかが気掛かりだ。そのせいで病院にも度々世話になっていた。どこで何をしていてもいいが、とりあえず生きていて欲しいとただただ願う。
わたしは前から言ってるけど手紙が大好きだ。一行でも二行でも手書きは本当に嬉しいもの。友人からもらったものはたとえそれが切れ端であろうとも絶対に捨てない。学生時代にもらった手紙も社会に出てからもらった手紙も全てわたしの財産だ。お陰で今夜はわたしの探し物がまたひとつ見つかった。
by kingyo76 | 2009-06-01 00:03 | 日常